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身体の動き03〜上肢


身体(関節)の動きシリーズです。

今回は専門用語で「上肢」、肩甲骨〜指先までという、いわゆる腕部分の動きに注目してみていきましょう。

こちらが上肢部分の骨格です。

photo from TEAM LAB BODY

ここには身体の動きの質を高めるために重要な骨があります。

それが「肩甲骨」です。

写真でいうと、上の方にある三角形の骨ですね。

ちょうど肩の後ろにあたる部分です。

この「肩甲骨」の可動域が、いわゆる腕の可動域を決定づけています。

しかし、背中にあって自分では見れないうえに、
意識しないと動かせないところもあって、多くの人は、
この肩甲骨の可動域がかなり狭まっています。

そのために肩や首のコリ、腕のしびれなどを訴える人が多いのです。

ですので、特に上半身においてどこを注目すべきかと聞かれれば、
まずは「肩甲骨」ということになるかと思います。

「肩甲骨」=「健康骨」などとも言われますしね。


さて、ここでもう1度骨格を見てみます。

右肩のところに注目してください。
肩甲骨と上腕部の付け根部分ですが、胴体部とは一切接していません。

つまり、骨格だけを見ると、肩甲骨と肩(上腕部)は「浮いている」んです!!

一応、解剖学的には「肩甲上腕関節」といいます。


では、どこで胴体部分と繋がっているかというと、肩甲骨は鎖骨と繋がっていて(肩鎖関節)、その鎖骨が、胸の真ん中にネクタイのようにある胸骨の上部、胸骨柄(きょうこつへい)で関節を形成(胸鎖関節)することで、胴体と接しています。

つまり、胸骨柄を中心として、鎖骨がやじろべえみたいに乗っかっているのが、私たちの肩周りなのです。

決して腕は胴体から生えているのではありません。

実は相当可動域の広い部分の一つといえるのです。

しかし、浮いている骨だけあって、その場にとどまるために、
数多くの筋肉が上からつり下げ、下から支えるなど、
折り重なるように肩甲骨を保持しています。

そのため、普段は意識できない筋肉もたくさんあり、
その忘れられた筋肉たちが、錆び付いてくるために、
肩甲骨周りの可動域が狭められていくのです。

それを解消するひとつの手段として、手ぬぐいもあるというワケです。

脱力しながら、少しずつ油を注すように動かしてあげることで、
少しずつ可動域が広がって、やがて肩こりも軽減してくるはずです。

無理して頑張って動かすワケではありませんのでご注意を。

この肩甲骨に関しては、今後何度も登場してくると思います。

まずは、肩甲骨が大切だということだけでも覚えておいてください。

さあ、それでは上肢の身体の動きを見て行きましょう。

●肩甲骨


まずは、これがリラックスしている通常の位置です。


【挙上】

肩をすくめるように肩甲骨を上に持ち上げる動きです。

[関わる筋肉]僧帽筋(上部/一側性)、大菱形筋、小菱形筋、肩甲挙筋(一側性)


【下方移動】

平行棒で身体を支える時のように肩を下げて突っ張る動きです。

[関わる筋肉]僧帽筋(下部/一側性)、前鋸筋(起始部が固定されていると)、小胸筋


【内転または後退】

両腕を広げた時のように肩甲骨同士が寄り合うような動きです。

[関わる筋肉]僧帽筋(中部/一側性)、大菱形筋、小菱形筋


【外転または前出】

腕を前に押し出すような動きです。

[関わる筋肉]前鋸筋(起始部が固定されていると)、小胸筋


【上方回旋】

肩をすくめながら腕を上に大きく上げるような動きです。

[関わる筋肉]僧帽筋(上部、下部/一側性)


【下方回旋】

腕を回しながら下に下ろしてくるような動きです。

[関わる筋肉]大菱形筋、小菱形筋、肩甲挙筋(一側性)

肩甲骨の動きは以上の6パターンです。
どれもややこしい動きですが、特に最後の2つ、
「上方回旋」と「下方回旋」は自分でも正しく動いているか
よくわからない動きの一つです。

いずれまた肩甲骨は詳しく説明していきたいと思います。

●肩


【屈曲】

腕を前に上げる動きです。

[関わる筋肉]三角筋(前部繊維)、大胸筋(上部繊維)、上腕二頭筋、烏口腕筋


【伸展】

腕を後ろに上げる動きです。

[関わる筋肉]三角筋(後部繊維)、広背筋、大円筋、棘下筋、小円筋、大胸筋(下部繊維)、上腕三頭筋(長頭)


【外転】

腕を横から上に上げる動きです。

[関わる筋肉]三角筋(全繊維)、棘上筋


【内転】

腕を下から身体の内側へ上げる動きです。

[関わる筋肉]広背筋、大円筋、棘下筋、小円筋、大胸筋(筋肉全体で)、上腕三頭筋(長頭)、烏口腕筋


【水平外転】

腕を水平に後ろへと回す動きです。

[関わる筋肉]三角筋(後部繊維)、棘下筋、小円筋


【水平内転】

腕を水平に内側に回す動きです。

[関わる筋肉]三角筋(前部繊維)、大胸筋(上部繊維)


【外旋】

肘の内側が外に向かう動きです。

[関わる筋肉]三角筋(後部繊維)、棘下筋、小円筋


【内旋】

肘が内側に回り込んでくる動きです。

[関わる筋肉]三角筋(前部繊維)、広背筋、大円筋、肩甲下筋、大胸筋(筋肉全体で)

以上、肩は8種類の動きで構成されています。

肩は最も複雑な動きを生み出す場所のひとつなので、それだけに、
痛みの原因を特定するのが困難な場所のひとつでもあります。

ここもまたいずれ。

●肘


【伸展】

ヒジを伸ばす動きです。

[関わる筋肉]上腕三頭筋(全頭)、指伸筋(関与する)


【屈曲】

ヒジを曲げる動きです。

[関わる筋肉]上腕二頭筋、上腕筋、腕撓骨筋、長撓側手根伸筋(関与する)、短撓側手根伸筋(関与する)、撓側手根屈筋、尺側手根屈筋(させる場合もある)、円回内筋(関与する)、長掌筋

ヒジは曲げるか伸ばすかだけだから、簡単ですよね。

でも、特に「屈曲」には様々な筋肉が関与しています。
この使い方がまたポイントになってくるワケですが。

次に、細かい筋肉が多数存在する前腕部以降を見てみましょう。

●前腕


【回外】

親指が外側へ倒れ込むような動きです。

[関わる筋肉]上腕二頭筋、腕撓骨筋(抵抗力に逆らう場合関与)、回外筋


【回内】

親指が内側に回り込むような動きです。

[関わる筋肉]腕撓骨筋(抵抗力に逆らう場合関与)、円回内筋、方形回内筋

前腕も内か外に回すという2種類なので単純です。

しかし、骨一本の上腕部に対して、この前腕部は、
「尺骨(小指側)」と「撓骨(とうこつ:親指側)」
という、2本の骨で構成されています。

「この2本の骨をどう使うか」ということも、
動きを知る上では欠かすことができません。

ここの使い方次第で、ドラムのスティックさばき、
パーカッションの手や指の使い方、
棒や剣の振り方、ダンスの表現力の出し方など、
あらゆる動きが変わってきます。

これもいずれ。

●手関節


【伸展】

地面に手のひらを付く時の手首の動きです。

[関わる筋肉]長撓側手根伸筋、短撓側手根伸筋、尺側手根伸筋、指伸筋、示指伸筋(第2指)


【屈曲】

手のひらを内側に折り込むような動きです。

[関わる筋肉]撓側手根屈筋、尺側手根屈筋、深指屈筋(させる場合もある)、浅指屈筋、長掌筋


【内転(尺屈)】

小指側に手のひらが倒れるような動きです。

[関わる筋肉]尺側手根伸筋、尺側手根屈筋


【外転(撓屈)】

親指側に手のひらが倒れてくるような動きです。

[関わる筋肉]長撓側手根伸筋、短撓側手根伸筋、撓側手根屈筋

この手関節に関わる骨や筋肉も実に興味深いものがあります。

そして、指です。

人間の場合、母指(親指)が他のほ乳類に比べても、
格段に進化していて、自由に物を掴むこともできます。

だからこそ、そこにまたヒントが隠されているワケですが。

ともかく、指の動きは「母指」と「(その他の)四指」を指します。

そのため身体の動きも「母指」と「指」に分かれます。

●母指


【外転】

親指が手のひらに対して垂直方向へ開く動きです。

[関わる筋肉]長母指外転筋、短母指伸筋、長母指伸筋


【内転】

親指が手の甲側に回っていく動きです。

[関わる筋肉]母指内転筋


【対立】

親指と小指同士を押し付け合う動きです。

[関わる筋肉]母指対立筋、小指対立筋


【屈曲】

親指が小指側に倒れていく動きです。

[関わる筋肉]母指内転筋(関与する)、長母指屈筋


【伸展】

手のひらを広げる動きです。

[関わる筋肉]長・短母指伸筋、長母指外転筋

親指だけで5種類の動きがあります。

そして、最後に「指」です。

●指


【指伸展】

四指が手の甲側に倒れる動きです。

[関わる筋肉]指伸筋(第2~5指)、第1背側骨間筋(第2指/関与する)、示指伸筋(第2指)、小指伸筋(第5指)


【指屈曲】

拳を握る動きです。

[関わる筋肉]深指屈筋(第2~5指)、浅指屈筋(第2~5指)、第1背側骨間筋(第2指/関与する)、虫様筋(MP関節を屈曲させ、DIP関節、PIP関節を伸展する)、小指外転筋(第5指)、短小指屈筋(第5指)、短掌筋


【指外転】

中指を中心に指を外側に開く動きです。

[関わる筋肉]第1背側骨間筋(第2指)、背側骨間筋、小指外転筋(第5指)、小指伸筋(第5指)


【指内転】

中指を中心に指を閉じる動きです。

[関わる筋肉]掌側骨間筋(第2,4,5指を第3指の方へ)

以上4種が指の動きです。

上肢だけで、実に31種類の動きがあります。

それだけ、細かく正確な動きができるという証拠でしょう。

これらの組み合わせ次第で、きっと思った以上の
ことができるに違いありません。

そして、体幹部へと続きます〜。

参考資料:『ボディ・ナビゲーション』(医道の日本社)ほか、解剖学の書籍やウェブサイト

photo by Daiki Yamashita (Wah Qi Neh)

Special thanks to TEAM LAB BODY

※[関わる筋肉]は資料を元に記載していますが、記載漏れなどもあるかもしれません。もし、間違いを見つけられた方はご一報ください。

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