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ゆっくり動くこと


“テラノ式手ぬぐい体操”の基本ルールにもありますが、

「ゆっくりやる(動く)こと」は、

身体から発するメッセージに気づくために、
非常に大切なことだと思っています。

苦手な動きも、早く動くとできちゃったりするんです。
でも、あえてゆっくり動くことで見えてくるものもある。

少し前ですが、女子プロゴルファーの宮里藍さんが、
インタビューで非常に興味深いことを話していました。

それは彼女のユニークな練習方法についての特集だったのですが、
何がユニークなのかというと、一般的なゴルファーは、
たくさんの球を実際に打ちながら、自分のスウィングを
固定・修正していくのですが、彼女の場合、最初に球は打ちません。

何をするかというと、“超ゆっくりスウィング”するんです。

テイクバックからフォロースルーまで約2分かけて行うそうで、
その姿は、まるでコマ送り映像を見ているかのようです。

その練習方法にどういう意味があるのかと尋ねられると、

「苦手なポイントを見つけるため」

と、答えていました。

なぜなら、自分が苦手な、動きにくいポイントとともいえますが、
そんな場所に来ると、自然とそこを早く終えようとして、
“速く動いてしまう”というのです。
それは、無意識のうちに自分の身体が反応してしまって、
苦手な所をさっさとやりすごそうとしてしまうからでしょう。

この「無意識」こそが、自分自身をややこしいモノに
してしまっているんですが、その辺りの話も追々。

でも、その苦手なポイントにさしかかったときに、
あえて、そこにフォーカスを当ててみると、
やはり、そこにさしかかったときに余計な力が入ったり、
方向がずれてしまったりしているといいます。

それに気づいたら修正する。

これはわずかな瞬間のことなので、速く動いているうちは
そのズレがどこにあるのか、どうズレているのかに気づけません。

ゆっくりやるから見えてくるのです。

それが修正できたら、スウィングはキレイな軌道を描きます。

あとは、それを速くしていけば、キレイな軌道のまま、
スピードが上がるので、思うように球を飛ばせるようになるというわけです。

まったくその通りです。ま、ボクがいうのもおこがましいですが。

さすが、世界を相手に戦って成績を残す人は、
自分の身体に対する気づきや洞察もハンパないですね。

ちなみに、ゆっくり動く練習というのは、
ボクシングや格闘技でも取り入れられています。

例えばパンチを例にとってみても、構えたポジションから、
最初はゆっくりと的に向かってパンチを出します。

ゆっくりやっているわけですから、大体の人が最短距離かつ、
最も無駄のない脱力した動きでできるわけです。

その“正しいフォーム”を徐々に速めて行く。

理想的には最も遅く動いたときと、最速で動いたときに
描く軌道が、まったく同じということです。

どの速さで動こうが同じ軌道を描いたら、それは、
その動きをモノにしたということがいえるでしょう。

でも、大概、スピードを上げて行くと精度が落ちます。

どうしても、スピードを上げようと意識して力が入るからです。
そして、速度が速いと、勢いでなんとかなってしまうことも多いのです。

それでも、結果として成功していればよしという考え方もありますが、
それは“偶然”に頼って生きているのと同じことです。

大切なのは結果よりもプロセスです。

プロセスをしっかりと構築できている人は、
何度繰り返しても結果はほとんど変わりません。

結果だけを大切にしてプロセスを軽視している人は、
その時のコンディションによって結果が大きく変わります。

だからこそ、まずはゆっくり正確に動けるかどうかが非常に大切になります。

手ぬぐい体操においてもそうです。

例えば、両手で手ぬぐいの両端を持って、グルっと後ろまで
回すという運動をしてみたとき、柔らかいと1周しますが、

最初はある程度の所まで肩が回ったら、それ以上後ろはいきません。

ここで、多く人は「グルっと後ろまで回したい」と思ってしまい、
さらに、頑張って、「ふんっ」と勢いをつけて回そうとしたりします。

勢いつけて回すとか、絶対ダメです!!

なぜなら、普段動かしている人ならまだしも、
普段あまり運動をしない人が急激に動いてしまうと、
無理な力がかかってヘタすると肩が外れたり、
筋をピキっといわしたりしてしまいますから。

こうしたケガを防ぐというためにもゆっくり動くことは大切なのです。

ゆっくり動いて行けば、これ以上行けないなというところが、
より明確にわかってきますから、そこでやめられます。

でも、速く、勢いでやってしまうといけちゃうこともありますが、
いけなくて大変なことにもなりかねません。

重々ご注意ください。

また、先程、宮里藍さんのエピソードでも出たように、
ゆっくり動くことによって、自分の動かないポイント、
凝っていて脱力できないポイント、痛みが始まるポイントを、
正確に理解することができます。

肩をグルっと回すと痛いという方は結構います。

そこで、ボクは質問します。

「肩のどこが痛いか正確に指で指してみてください」と。

でも、ほとんどの人が正確に言い当てられません。

大体この辺ということは言えても、「ココです」とは言えません。

実はそれが非常に大切なヒントなんです。
正確に「ココ」が痛いというのがわかれば、
なぜそこが痛くなったのかを探ることができます。

そこだけがに負担をかけすぎていないか、
使い方が間違っているのではないか、
骨などが当たって干渉していないか、
他のところに不具合があってそこに痛みが出ていないか、
あるいは内蔵の不具合が気血を滞らせて、痛みとなっていないか、
などなど、原因は様々ですがともかく探ることができます。

どこかを動かして痛みが出るという場合、
正確に痛みのポイントを見つけるためには、ゆっくり動かしてみるんです。

すると、必ず「痛みが始まるポイント」があります。
痛みでなく「不具合」、「不快感」という場合もあります。

それを感じられたら第一ステージクリアです。

次に何をするかというと、その時にどう動いたら気持ち良くなるのか、
というのを探って行くんです。

ゆっくりと脱力しながら身体と対話していくと、
身体が心地よい方向を示してくれます。

それに従ってゆっくりと動いてみるんです。

すると、痛みがゆるんできたり、気持ちよくなってきたりします。

そういう「心地よい方向」を探って行くのが第2ステージです。

そこを深めていくと、いずれ痛みや不具合がなくなったりします。

なくならなかったとしても、「どう動かせば痛みが少ないか」
という動かし方があるのに気づくはずです。

これは速く動いてしまっては見つけられません。

ケガの防止をしつつ、身体から発せられる微細なメッセージに
気づいていくためにも「ゆっくり動くこと」が肝要です。

あと、太極拳とかも非常にゆっくり動きますよね。

ゆっくり動くからお年寄りの方でもできますしね。

このゆっくり動く大切さは、生き物を見てみてもそうです。

カメやゾウといったゆっくり動く動物は長生きです。
逆にセコセコ動き回っている動物は早死にの傾向にあります。

これは呼吸がゆっくりで、心臓の動くペースがゆっくりだからという説もあります。
ちなみに、諸説ありますが、生き物の心臓の鼓動は、
種は違えどおよそ1億回と決まっているという話もあります。

ゆったりした呼吸があるから、全身に気血が巡らせられます。

ハアハア息が荒いということは緊張の証です。

緊張は気血の滞りの第一歩です。

それに、急いでアタフタ何かをしても、いい結果って出ないですよね。

焦らないためにも、なるべくゆっくりとした呼吸を心がけたいですね。

すると、小さなことでは動じない泰然自若とした心持ちになっていくはずです。

今の世の中、スピードがものスゴく速くなっていますから、
ゆっくり歩くことは遅れているんじゃないかと焦ってしまいます。

でも、カメのように歩みがノロくてもいいんです。

その方が、かえって周りの景色もよく見えるし、
つまづいて転ぶことも少なくなります。

速くいくことがエラくもなんともありません。

楽しめるかどうか。

ゆったりと楽しんでいきましょう!!

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